はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はたけやきみこ氏がお答えします。

妊娠・出産を機に家計の見直しをしました。夫婦で格安スマホに変え、電力会社を見直し、保険も必要最低限の死亡保障にしました。しかし、赤ちゃんが生まれると、まず光熱費が上がりました。産後の体調不良に悩まされ、私の医療費も上がっています。以前のように貯金ができずに焦っています。いくらほど貯金があれば、いざという時安心できるのでしょうか。また、家計の節約のために何かできることはありますか。


〈相談者プロフィール〉
・女性、29歳、既婚(夫:30歳・公務員)、子供1人(7ヵ月)
・職業:公務員(※2019年4月まで育児休業中)
・居住形態:持ち家(マンション)
・手取りの世帯月収:40万円
・毎月の支出目安:35万円
・貯金:250万円
・投資:約70万円
・負債(住宅ローン):3800万円
(※産休に入るまでの年収:夫510万円、妻470万円)


たけや: お子様のご誕生おめでとうございます! 支出の見直しをされていらっしゃるということで素晴らしい行動力です。育児休業中に、復職後のために家計の見直しをされる方は多いですよ。

復職後は生活のサイクルに慣れるまで、その日にすべき事をこなすだけでいっぱいいっぱいになりがちです。そうなるとお金のことはどうしても後回しになりますので、今のうちに整理整頓や準備ができると安心です。

家族が増えれば「支出」は増える

ご相談内容に「以前のように貯金ができていない」とあります。それは当然のことです。家族が増えて、かつ、ご相談者様は育休中で収入は減っています。家族が増えれば生活にかかる支出は増加します。しかも、収入は以前よりも減っているのですから、この現状で貯金を以前のようにできるのかというと、それは現実的に難しいと思われます。復職後に時短勤務を選択されるのでしたら、同じ現状が続くでしょう。

貯金が増えることは喜ばしいことですが、この点ばかりに目を向けず、大切なことを忘れないようにしましょう。産後の肥立ちが悪かったのでしょうか。体調不良に悩まされていたとのこと。この点がとても気になります。目先の貯金よりも、体調を万全に近づけるように整えておくことが最優先です。今後、体調不良がぶり返してしまえば、それこそ貯金どころではなくなります。

共働きのための支出として、復職後には保育料もかかります。「幼児教育の無償化」についてもすべてが無償になるわけではありません。小学生になれば学童保育料もかかります。また、お子様がある程度の年齢になるまでは病児(後)保育の利用も頻繁にあるでしょう。このように仕事をしていくうえでは外せない経費が生じます。子供にかかる支出はこれからもっと顕著に増えていきます。教育費であれば、習い事に、塾代など、かければいくらでもお金を投じることができます。

長い人生を生きていくうえでは、思うように貯金ができない、取り崩すことになる期間は必ずあるものです。目先の支出に一喜一憂せずに視野を広くして見通しを立てましょう。

3つのお金で見通しを立てる

人生におけるお金を3つの段階に分けて考えてみましょう。ご相談者様の現状では、下記のようにお金を段階的に仕分けできます。

(1)当面必要なお金: 生活費、予備費・緊急的な費用
(2)中期・長期的に必要なお金: 子育て費(養育費や教育費)
(3)超長期的に必要なお金: 老後の準備や生活費

通信費などの節約をされても、一方で、お子様にかかる支出もあり、貯蓄に回すお金が思うように残らないのかもしれません。無駄使いが原因であれば支出の節約は良いと思いますが、ストレスのかかるような極端な節約はおすすめしません。切羽詰まった節約は最後の砦になります。

それよりも、「貯金の目的」「積み立てる期間」「金額」を決めて、収入から貯金を先に捻出してみましょう。投資もされているようですから中長期的な目的に利用されてはいかがでしょうか。そして、貯金額を除いた残りの金額でひと月の生活ができるかどうか検討・調整してみてください。

現状は子育て費が貯金の大きな目的となると思いますが、緊急的な支出にも備えが必要です。災害や失業・転職、病気やケガによる入院、療養などは突然やってきますので、生活費の3~6ヵ月くらいの緊急費等を備えておくと安心です。

さらに、先の話ですが定年後の暮らしについても、夫婦で話し合っておくと安心です。自宅をリフォームするのか、手放すのかなど、50代に入ると老後のことがリアルになってきます。

発想の転換で「貯めるチャンス」を逃さない

家計の節約は行う人が大変な思いをしますし、ストレスをためがちです。そこで、貯めるチャンスを逃さないように発想の転換をしてみましょう。

例えば、相談者様は住宅ローンを返済されていますが、今後、借換えや繰上げ返済をする機会があるかもしれません。その時に、返済額が減った場合は、その分を貯金に回します。また、仕事で昇進や昇給、臨時のボーナスがあれば、増えた分を貯金に回すようにします。お金に余裕が出てしまうと、つい使ってしまいたくなりますが、ここで、抑制をしておくように考えを持っていきましょう。キツキツの節約をしていると、それまでの我慢が噴出して一気にリバウンドしてしまうかもしれませんよ。

若い世代の家計。これからの長い人生のうえでは、いい時も悪い時もあります。まずは、節約よりも、健康維持と仕事を継続していくことが、長い目で見ると“マネープランの大きな幹”になってくれます。がんばってくださいね。

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