はじめに

10月12日に日本列島を襲った台風19号は、多数の犠牲者を出した河川の決壊などを引き起こし、一部の鉄道や道路といった交通などのインフラにも大きな影響を及ぼしました。2週間近くが経過した現在も、各地で避難生活を余儀なくされている住民がいます。

これまでの報道では台風19号による社会的な問題が中心ですが、この国の経済にはどのような影響が及びそうなのでしょうか。以下では、台風19号のような大災害が日本経済や金融市場へ与える影響を考えたいと思います。


経済へのマイナス影響は微々たるもの

まずは、経済へのネガティブな影響として、鉄道・道路など社会インフラが機能不全となり、一部地域や個別の企業の業績への下押しが挙げられます。ただし、個別企業などへの影響は甚大でも、今回の台風は影響を受ける企業は一部であるため、経済全体への影響はほぼ観測されないでしょう。

一方、今回の台風到来に備えて、前日には多くのスーパーやホームセンターで食料品や日用品が品薄になるほど売れたため、一部小売店は若干恩恵を受けました。ただ、一過性の消費の盛り上がりは、言うまでもありませんが一時的な動きです。

賃金の伸びが依然極めて低い中で、10月の消費増税によって2兆~3兆円の恒久的な所得目減りが起きるため、一時的に食料品などの消費が増えても、多くの家計は増やした分の消費を今後抑制するだけでしょう。

つまり、一部企業の業績、そして株価にやや影響があるとしても、今回台風19号による、日本経済や株式市場全体への影響は微々たるものとみられます。

問題は政府歳出がどれだけ増えるか

また、災害による社会インフラの毀損で、その修繕のため、国や自治体による投資や消費が増え、経済成長率を高める経路があります。追加で増える政府の支出金額が、たとえば1兆円の規模(GDP比0.2%)に増えれば、その分、日本経済の成長率を高めます。過去5年の日本の経済成長率は約1%ですから、無視できない影響です。

政府の歳出拡大が経済に望ましい影響を及ぼすかは、経済状況に依存します。現在、インフレ率が1%以下で停滞が続いており、日本経済全体でみれば「供給>需要」の状況と筆者は判断しています。

公的部門が投資・消費によって財政支出を増やせば、需要が増えるので需要不足のアンバランスが改善します。現在の日本経済にとって、政府による歳出拡大は通常、日本経済の豊かさを高めるでしょう。

問題は、今回の台風災害の費用として、どの程度の政府歳出が追加的に増えるかです。本稿を執筆している10月23日時点で政府からの情報が限られますが、現状の報道を踏まえると、予備費や例年通りの補正予算などで災害対策費の財源が手当てされる見通しです。

ただ、政府による歳出金額が追加的に1兆円以上の規模まで増える可能性はかなり低いとみられ、財政支出拡大を通じた日本経済全体への影響はほぼゼロでしょう。なお、10月からの消費増税という緊縮財政政策を受けて、すでに景気後退の瀬戸際にある日本経済は、2020年にゼロ成長となり、景気後退に至ると筆者は予想しています。

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