はじめに

「初心者におすすめの商品は?」「インデックスファンドがいいの?」

こういった疑問は、投資を始めた人がまず抱くものではないでしょうか。2020年10月22日、オンラインセミナー「投資未経験者向け フツーの人にとっての資産運用とは?」が開催されました。

日興アセットマネジメント株式会社グローバルマーケティング共同ヘッド兼マーケティング部長の今福啓之氏が、自身の資産形成を題材に、参加者から寄せられた質問に答えます。

聞き手は株式会社マネーフォワード取締役兼Fintech研究所長の瀧俊雄です。本記事ではその内容を一部抜粋・編集して紹介します。

株価が下がったときにうろたえないためには

瀧:さらにいくつか質問をご紹介します。「何から始めればいいんでしょうか?」、これについてはいかがでしょうか。

今福:そうですね。私は何かを推奨したり批評したりする立場にありませんので、心構えの話になってしまいますが、私はとにかく、自分が納得してから買うことに尽きると思っています。

例えば、今年3月のコロナショックで、世界の株式の平均値は35%くらい下がりました。

そこで大事なのは、下がった時に止めないことです。コロナショックで結構多くの方が積み立てを停止したということを聞きますが、それが一番やってはいけないことだと思います。どちらかというと、その時は積み立てを増やさないといけないくらいです。

皆さんなぜ、そういったときにうろたえてしまうかというと、失礼ですが、やはり納得感が少ないまま買っていたからだと思います。

例えば、65歳で定年になったとき、その先の生活にはいくら必要だと思いますか。これを考えることが全てのスタートになると思っています。イメージが沸きにくければ、自分のご両親に今いくら使っているかと聞いてみてもいいかもしれません。ここでは仮に2,000万円としてみましょう。

仮に1ヶ月に10万円使いたい、といった場合。毎月10万円を引き出し続けたら、2,000万円を使い切るまで約16年です。ということは、65歳までに2,000万円を作っていれば、毎月10万円と年金+αでだいたい生活できます。たまには夫婦で旅行に行ったりもできるでしょう。

つまり、自分の将来を前向きに作っていくためにお金は必要なんです。そのためにリスクを取っていく、という覚悟を持ちましょう。それがあれば、リーマンショックのような暴落で下がっても、65歳がゴールだから動じないという境地に至れると思います。

もちろん、本当にお金が必要なときには売ったりもします。私も、自分が住むためのマンションを買う時に投資信託を一部売って頭金を捻出しました。お金が要るのであれば、部分売却して用立てする、という考え方なんです。

20年でほぼ倍、驚きのリターンが出たカラクリ

今福: さらに私の例をお話しさせていただきます。2000年から日本株のファンドに積み立てをしているんですが、積み立て直後に日経平均はITバブル崩壊で下がり、そこから少し上がってリーマンショックでまた下がります。そのあとは、ずっと右往左往していって、2012年からアベノミクス相場で上がり始めました。

2回下がって、株価が戻っただけなのにも関わらず、私の持っている投資信託の評価額は2,187万円です。元本は毎月5万円で約20年間続けた1,240万円です。つまり76%ものリターンが出ています。しかし、投資対象である日経平均株価は、ほぼ戻っただけです。

日経平均株価と積立投資額

ではなぜ、このようなリターンが出たのでしょうか。一言で説明すると、株価が下がった時に(投資信託の)口数が増え、株価が上がった時に貯まった口数の分が“花開いている”という理屈なのです。

もう少し詳しく説明すると、「毎月5万円」と決めて買っていると、基準価額が安くなっていると、その分口数を多く得ることになります。

その後、株価が上がっていくと、仕込んで増えた口数がブーストしてリターンが76%になりました。これが私の資産形成の結果です。これはある意味、理想的な動き方で、投信積み立てというのは何回か下がって、最後に上がるのが一番おいしいんです。

企業価値の株価は“利益”で見る

瀧:投資を始めるかどうか迷っている方の中には「株ってそもそもギャンブルなんじゃないの」と思う方もいると思います。もしくは「不動産ファンドの方が良いのでは?」とか、「外貨預金は?」という疑問もあるかもしれません。

そういう質問に対して、今福様としては、どのようにお答えされますか。

今福:私たちが日々目にしているのは「需給の株価」です。これは、米国大統領の発言などで簡単に動いてしまいますが、ほとんど意味がない動きなんです。一方で、「企業価値の株価」は目には見えませんが、間違いなく存在します。