はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は横山光昭氏がお答えします。

仕方がないとはわかっているのですが、不妊治療をしているので、貯蓄が減る一方でまったく貯まりません。治療や検査の内容によって毎月の金額にばらつきはありますが、治療費は年間で180万円ほどかかります。体に負担をかけたくないので仕事はしていません。また、妊娠しやすい体を作るために、本で得た情報やセミナーで聞いた食材をよく食べるようにしています。疲れて外食にしてしまう日も多いのですが、体には気を使っているつもりです。


ただ、今のまま支出を続け、貯蓄が減ってしまうと、たとえ子を授かっても生活が大変になるのではないかと心配になるときがあります。働きに出ることも不安ですので、やりくりでなんとか支出を抑えていきたいと思っています。


〈相談者プロフィール〉
・女性、36歳、既婚(夫:36歳・会社員)
・職業:専業主婦
・手取りの世帯月収:63.2万円
・手取り年間ボーナス:なし
・貯蓄:約800万円


【支出の内訳(62.6万円)】
・住居費:12万円  
・食費:10.3万円
・水道光熱費:2.3万円
・通信費:1.1万円
・生命保険料:2.8万円
・日用品代:0.8万円
・医療費:15.3万円
・教育費:2万円(妊活のセミナー代)
・交通費:1.6万円(タクシーが多め)
・被服費:1.8万円(セミナーに行く洋服代)
・交際費:1.2万円(セミナーの懇親会)
・娯楽費:1万円(夫との外出)
・こづかい:9万円(夫7万円、妻2万円)
・その他:1.4万円


横山: ご相談ありがとうございます。不妊治療費はよく聞く悩みです。ただ、必要な支出でもあると思うので、捻出の仕方は悩みますね。解決の糸口は、支出の優先順位をどう決め、不妊治療費を出すためにどの支出を抑えていくかというメリハリをつけることだと思います。

「仕方がない」と使えるだけ使うのはNG

不妊治療に毎月約15万円かかっていることが負担感を増しているのかもしれませんが、支出の仕方をよく見てみると、他にも支出が高い費目がいくつかあります。食費、交通費、被服費、交際費などは、もう少し抑えられてもよいはずです。

「不妊治療中だから仕方がない」と支出していませんか。治療中であっても、支出にメリハリをつけられるはずです。不妊治療を最優先するのならば、その他の支出の抑え方を考えましょう。

そうでなければ、せっかくのご主人の給料を使い切り、貯蓄がまったくできない家計となってしまいます。現状でも、収入約63万円に対し、毎月6,000円しか残らない計算です。使えるだけお金を使ってしまっているようにも見えます。そして貯蓄が減っているというのであれば、赤字を出してしまっている月も多いのでしょう。

これからお子さんができて不妊治療費の支出がなくなったとしても、次は妊娠を維持するために、お子さんが生まれたら育児のためにとお金をかけるようになるでしょう。その時々に優先したい支出を考え、それ以外の支出は節約するという習慣をつけてほしいと思います。

夫婦二人で食費10万はかかりすぎ

夫婦二人で食費10万円はいくら体に気を使っているとはいえ、多すぎだと思います。しかも、食材に気を使っておきながら、疲れたら外食というのも、本来の食に対する考えとは違う行動のように思えます。

食に気を使うならば、それなりに意思を通す行動をとり、最大限の効果を狙うようにしてほしいものです。ですから、疲労度をコントロールし、購入した食材での食事を中心として、外食は控えるなどメリハリをつけましょう。また、食材に気を付けるのもいいですが、産地などを気にしているとどうしても高上りです。その時に安いものから選んで購入するなどして、むやみな購入は控えましょう。

考え方は、この場合も「消費」「浪費」「投資」です。不妊治療はある意味、人生設計への投資だと思います。それがうまくいった後の暮らしについても考えながら、良い習慣を作り、お金の使い方を決めていきましょう。

どの支出を優先するのかルールを決める

とはいっても、あれがいいよ、これがいいよと言われると、気持ちが揺らぐのが人間です。少々のことで気持ちがブレないよう、不妊治療をしながらの生活で、どのようにお金を使っていくのか、どのような暮らしをしていくのかの軸を持つようにしましょう。

そうすると、暮らし方も、お金の使い方も他人の言葉に左右されすぎず、うまくコントロールできるようになると思います。

私ならば、不妊治療を続けるために、タクシー代でかさばる交通費を電車中心の移動に変えて節約しようと思いますし、セミナーも目新しい情報がなければ、書籍で済ませてしまおうと思ってしまいます。そうすると、洋服代も余分にかかりませんし、懇親会も参加が減りますよね。その代わり、不妊治療については内容を変えず、今まで通りにする。

そのように支出の仕方を工夫することや、何を優先させるのかという揺るがない気持ちが、今のご相談者さんには必要なのだと思います。もし、どうしても切り捨てられないものがあれば、自分のこづかいの中でやりくりして支払っていくということもアリです。

不妊治療はデリケートな支出です。ですが、家計にとって大きな負担になっているご家庭が多いというのが現状です。毎月の収入からはいくらまで、貯蓄からの負担はいくらまでとルールを決めていくことも大切だと思います。

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