はじめに

個人年金保険の受け取り方法

個人年金保険は、生命保険会社などが取り扱っていて、公的年金の補完として利用されています。10年以上にわたって保険料を支払い、60歳以降に10年以上年金を受け取るなどの条件を満たすと、生命保険料控除を利用して老後資金の準備ができます。

年金の受け取り方は、一括で受け取る方法と年金で受け取る方法があります。受け取る金額は、一括で受け取る場合は、年金で受け取る場合の総額よりは目減りして少なくなります。
契約者と受取人が違う場合には贈与税がかかりますが、ここでは契約者と受取人が同一である場合を取り上げます。

一括で受け取る場合
契約者と受取人が同一で年金を一括で受け取る場合には、所得税の一時所得になります。
一時所得の計算は、

一時所得=受取った金額-支払った保険料-特別控除額(50万円)

となり、税金は一時所得の金額を2分の1したものにかかります。特別控除額が50万円あるため、受取った金額と支払った金額の差額が50万円以上ない場合は課税されません。

年金で受け取る場合
契約者と受取人が同一で年金形式で受け取る場合には、所得税の雑所得になります。雑所得は、公的年金等の所得と公的年金以外の所得とを合算したものなります。公的年金等の収入には控除がありますが、個人年金には控除がありません。
年金受け取りの場合の保険金の雑所得金額の計算は

公的年金等以外の所得額=収入金額-必要経費

になります。必要経費は、確定年金や終身年金など年金の型によって異なります。

受け取り方をシミュレーションしてみる
個人年金保険の場合には、税金と受取金額に分けてシミュレーションしてみましょう。原則的には、年金でもらった場合の方が受け取り総額は多くなります。

<モデルケース>
月々1万円、35年間保険料を納め65歳から10年間確定年金としてもらう場合
払込保険料総額 420万円
一時金受取り 542万8304円
確定年金   基本年金額57万200円 受取総額570万2000円

一時金受取の場合は、受取った金額から支払った保険料を差し引いて、特別控除を差し引いた一時所得に課税される金額は、36万4152円になります。所得税率が10%なら所得税は3万6415円です。手元に残る金額は539万1889円になります。

一方、年金で受け取った場合には、年金額57万200円、必要経費は41万9999円になり、雑所得の金額は15万201円です。所得税率が10%なら所得税は1万5020円です。
受取総額から10年間の所得税を差し引くと、手元に残る金額は555万1800円です。
年金でもらう場合には、一時金でもらう場合とくらべると15万9911円多くなります。

たとえば、一時金でもらうときに、特別控除があるため税金がかからないという場合であっても、手元に残る総額を一時金と年金に分けてくらべてみましょう。また予定利率が高いときに加入した保険の場合、思った以上に税金がかかるということもあります。

まとめ

人生100年時代を背景に、2021年4月から70歳までの雇用の確保が努力義務化されました。定年が廃止された企業も見受けられ、働き続けるという選択肢も広がりました。どのような老後を過ごすのか、いつまで働くのかを選べる時代になってくれば、人によってベストな年金の受け取り方が異なってきます。一般的にお得といわれるものが当てはまらないケースもあるので、年金を受け取る前にシミュレーションをしておくとよいでしょう。

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